コラム COLUMN

知的財産権価値評価業務~弁理士が行う新たな鑑定業務

更新日 : 2015.10.07

知的財産価値評価推進センターによる記事、パテント2010 Vol.63 No. 7~10 「弁理士が行う新たな鑑定業務(知的財産権価値評価業務)」(1)~(4)を用いて、特許権・商標権の経済的価値評価、仮想事例、価値評価の重要ポイント、価値評価を行なう場面について勉強しました。50ページにわたる大部の記事でしたが、この所内勉強会により、メンバー全員が共通の土俵に立てたと確信します。

「知的財産の価値評価」とは、知的財産(知財)を重要な経営資源として捉え、企業が保有する特許・商標等の知財をその企業の事業に添って解析し、知的財産の観点から事業評価を行うことをいいます。知的財産の法的価値や技術的価値を分析・評価する定性的価値評価と、その経済的・金銭的価値を評価する定量的価値評価があります。

知的財産の価値評価は、主として企業の経営戦略や事業展開、将来の新規事業の探索に役立てることを目的としています。そのために企業が所有する特許権、商標権等に代表される知財を無形資産として明確化し、その技術的価値・経済的価値を客観的に分析評価します。分析対象は、当該企業が有する知財のほか、その企業の競合会社の知財や、その企業が属する業界全体の知財の分析を含むこともあります。

知財の価値評価として考慮する要素としては、その権利の現状確認、例えば出願済みなのか、出願公開されているのか、登録されているのか、現在も生きているのか、その権利が対象会社に帰属しているのか、権利範囲(特許請求の範囲)は適確なのか、権利としての有効性・安定性はあるのか(無効理由がないか)を判断した上で、その知財が企業の経営戦略や事業展開と合致しているかどうかを判断します。このような一連のプロセスを「知財の定性的評価」と言うことがあります。知財を上記の観点から点数付け(スコアリング)することも可能です。

知財は現物として存在しない無体財産ですが、不動産のような有体動産と同様に金銭的価値を有します。そのため、知財を金銭的価値と結び付け、上述の知財の点数付け(スコアリング)の結果や、企業の売上げとの関連から、知財の経済的価値評価を算出することも可能です。これを「知財の定量的評価」と言うこともあります。

つまり、知的財産の価値評価と称した場合、「知財の定性的評価」と「知財の定量的評価」の二つの意味を持つことになります。定性的評価であれ、定量的評価であれ、分析評価した内容を基に、企業が所有する知財を、今後企業の経営戦略として有効に活用するための提案やアドバイスをすることになります。この工程も含めて知財の価値評価ということができるでしょう。