コラム COLUMN

韓国特許庁、迅速かつ正確な価値評価システムを構築する

更新日 : 2023.03.10

韓国特許庁は、知財価値評価を知的財産・技術市場全般に拡散させるための戦略を本格的に推進するとのアナウンスをしました。

知財価値評価とは、知財の現在又は将来の価値を金額、等級等で算定することであり、近年知財を担保とした貸付、投資等の金融分野で活発に活用されています。ただし、知識財産金融の他にも、知的財産取引、特許侵害損害賠償および技術流出被害分析など様々な分野で知的財産価値評価が活用できるにもかかわらず、専門分野別価値評価モデルが用意されていないため、評価の信頼性に対する問題が提起されていました。

韓国特許庁は、2月24日(金)午後2時に韓国知識財産センター19階大会議室で、知的財産価値評価制度の問題点を検討し、解決策を練るための「知的財産価値評価拡散戦略専門家協議体」を発足しました。協議体では、産業界、法曹界、学界などの専門家が集まって取引、損害賠償、技術流出など専門分野別の価値評価の争点を発掘し、分野別知的財産価値評価モデルを開発するための研究方向を設定します。協議体から導き出された研究に方向に沿って、専門分野別の評価モデルを確立し、人工知能(AI)と専門家の評価を融合した新しい価値評価システムも構築していく計画とのことです。

韓国特許庁長官は「知的財産が企業成長のための投資などの金融分野で広く活用されるにつれて、知的財産価値評価市場も急激に成長している」とし、「韓国特許庁は今年を価値評価システム確立の元年とし、価値評価を知的財産と技術市場全般に普及させるために努力する」と述べました。

簡易知財価値評価ツール AIVAS-FREE TRIALのご提供について

更新日 : 2022.12.07

弁理士法人 浅村特許事務所 (所在地:東京都品川区、代表者:浅村 昌弘) は、知的財産の金銭的価値を簡易に評価するためのツールAIVAS-FREE TRIALの提供を2022年12月 1日に開始いたしました。特許番号等を入力するだけで知財価値の金銭的評価ができる簡易ツールです。本件につき12月 2日にプレスリリースを行った結果、総計30広告媒体にて掲載されました。

昨今、M&A、経営戦略、融資判断などにおいて知的財産の占める割合がますます高まっており、知的財産の金銭的な価値を確認することが企業にとって必須となっています。ただ、自社の特許権にコストと時間をかけて価値評価するだけのメリットがあるか不明な状況では、なかなか知財の価値判断をすることに踏み切れないのが実情です。

そのため浅村特許事務所は、このたびお客様ご自身が所有する特許権の金銭的価値を簡易に評価できる新しいツールAIVAS-FREE TRIALの提供を開始いたしました。
出願番号や予想売上などの簡単な入力を行うだけで、瞬時に特許権の評価額を算出することができます。
なお、実際の知財価値評価は、製品の市場や発明の技術評価など様々な情報に基づいて緻密に行う必要があります。

AIVAS-FREE TRIALは、お客様の特許権がそのような緻密な評価を行う価値があるかどうかを判断するための参考情報をご提供することを目的とするものです。
AIVAS-FREE TRIALでご提示した評価額について、浅村特許事務所は一切責任を負いかねますので、その旨ご了承の上でご利用ください。

■「AIVAS-FREE TRIAL」について

(1)知財金銭的価値簡易評価ツール AIVAS-FREE TRIAL提供アドレス
https://aivas.jp/freetrial

(2)評価手法
発明を実施している場合若しくは実施予定がある場合はインカムアプローチにより、実施していない場合はコストアプローチにより、自動的に特許権の評価額を算出し提示します。

(3)利用料
無料です。いつでも、どなたでも、何件でも自由に利用することができます。

(4)より緻密な金銭的価値評価のご提供

AIVAS-FREE TRIAL は簡易価値評価ツールです。
〇  特許出願中の発明の金銭的価値算出
〇  特許発明のより詳細な金銭的価値の算出
〇  複数特許発明全体としての金銭的価値の算出
〇  意匠権の金銭的価値算出
〇  商標権の金銭的価値算出
〇  著作権の金銭的価値算出
〇  複数の知的財産(例えば、特許発明と登録商標)の総合的知財価値評価
〇  企業が有する知的財産の総合知的財産金銭的価値評価

等、広く知的財産全般のより緻密な金銭的算出が必要な場合については、
浅村特許事務所知財価値評価サービスチームが個別に対応いたしますので、ご相談ください。

知的財産価値評価に関するご依頼、ご質問等は、お気軽に浅村特許事務所 知財価値評価お問い合わせ窓口までご連絡ください。

心よりお待ちしています。

知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドラインVer1.0の公表

更新日 : 2022.02.02

内閣府の知的財産戦略本部は表題の「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン」の案を昨年12月20日に公表していましたが、その後、令和4年1月28日、パブリックコメントの結果を反映した「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン」Ver1.0(以下、「本ガイドライン」ともいう)を公表しました。本ガイドラインは、コーポレートガバナンス・コード改定を受けて、「企業がどのような形で知財・無形資産の投資・活用戦略の開示やガバナンスの構築に取り組めば、投資家や金融機関から適切に評価されるか」について示すものです。これは、義務的な法令開示の枠組みづくりを目的とするものではなく、企業の自由度を確保した任意の開示を促すものだとされています。

2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、知財への投資に関して上場会社が考慮すべき姿勢が盛り込まれ、本コラムでもその後の「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」の動きについて紹介してきました。前回のコラム(2021年10月1日)では改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた対応として、
・上場企業による知財投資等についての開示(補充原則3-1③)
・取締役会による実効的な監督(補充原則4-2②)
という2つの補充原則を紹介しました。

今回は本ガイドラインに記載されている、5つのプリンシプル(原則)について紹介したいと思います。これは企業側にとっての4つの原則と、投資家・金融機関側にとっての1つの原則とに分かれます。
①「価格決定力」あるいは「ゲームチェンジ」につなげる(企業側)
・知財、無形資産を活用したビジネスモデルを積極的に展開し、安易な値下げを回避し、高い利益率を追求するための「価格決定力」につなげる。
・発想の大転換を伴うイノベーションによる競争環境の変革(ゲームチェンジ)につなげる。

②「費用」でなく「資産」の形成と捉える(企業側)
・知財、無形資産投資を「費用」でなく「資産」の形成と捉え、安易に削減の対象としないよう意識し、大胆な投資を推進する。
・イノベーションで新たな市場が確立されるまでの市場創成期においては、ある程度赤字を覚悟してでも大胆な知財・無形資産への投資を行わなければ、将来の企業価値向上は図れない。

③「ロジック/ストーリー」としての開示・発信
・ 企業は、自社の強みとなる知財、無形資産がどのように持続的な価値創造やキャッシュフローの創出につながっているかを「ロジック/ストーリー」として説得的に投資家や金融機関等に対して説明し、有意義な対話を進めていくことが求められる。

④全社横断的な体制整備とガバナンス構築(企業側)
・知財・無形資産の投資・活用戦略は、企業価値に大きな影響を与える経営マターであり、社内の幅広い知財、無形資産を全社的に管理し、知財、無形資産の投資・活用戦略を構築する全社横断的な体制を整備するとともに、取締役会がモニターするガバナンスを構築することが重要。

⑤中長期視点での投資への評価・支援(投資家・金融機関側)
・中長期的なESG(環境・社会・ガバナンス)課題の解決の観点から知財・無形資産投資を評価・支援する。

本ガイドラインは、大企業を中心とする上場会社の取締役や経営陣や、企業の知財・無形資産の投資・活用戦略を支える部門の方々が活用することを想定しています。また、中小・スタートアップ企業が、金融機関等と対話する際に活用したり、投資家や金融機関が企業と対話する際に活用することも期待されています。さらに、知財・無形資産の調査・コンサルティング会社や弁護士、弁理士、会計士等が本ガイドラインを活用することも期待されます。

内閣府、今後の知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に向けた取組について掲載

更新日 : 2021.10.01

内閣府の知的財産戦略本部は令和3年9月24日、「今後の知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に向けた取組について~改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえたコーポレート・ガバナンス報告書の提出に向けて~」を首相官邸HPに掲載しました。

(1)競争優位の確立に向けた知財・無形資産の投資・活用戦略の意義

日本企業は、知財・無形資産の投資・活用を促すことにより、他社製品との差別化を図り、高い利益率につなげ、稼ぐ力を強化することが求められています。企業の取締役会も、経営における知財・無形資産の重要性を踏まえ、価値創造やキャッシュフローの創出の仕組みを把握分析して持続可能なビジネスモデルを検討することが不可欠です。欧米の優良企業は、知財・無形資産の投資・活用を通じて競争優位を確立し、製品価値を引き上げることで、高い利益率に結びつけている一方、日本では製品の販売価格は製造コストの1.3倍にとどまりG7諸国の中で最も低いことが指摘されています。こうした状況を踏まえ、今後、日本企業は、知財・無形資産を活用したビジネスモデルを積極的に展開し、製品・サービス価格の安易な値下げを回避し、高い利益率を追求して、企業価値の向上を達成していくことが重要な課題であると考えられています。さらに日本企業は、今後、知財・無形資産の投資・活用戦略を、資本市場で活動する投資家に対し説得力のあるロジックやストーリーとして開示・説明することが重要であると考えられています。

(2)改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた対応

2021 年 6 月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、上場企業は知財投資等についての開示(補充原則3-1③)や取締役会による実効的な監督(補充原則4-2②)を行うことが求められます。今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂は、企業に知財・無形資産の投資・活用に向けた取組を促していく上でまたとない好機とされています。上場企業に対しては、2021 年末までに、改訂されたコーポレートガバナンス・コードに沿ったコーポレート・ガバナンス報告書を株式会社東京証券取引所へ提出することが求められているので、早ければ来年の決算を踏まえた統合報告や IR 資料等に、知財・無形資産の投資・活用戦略の構築が盛り込むことが見込まれています。各企業がこうした対応について、「実施(comply)」とするか、「実施していない理由を説明(explain)」とするかは、各企業の判断に任されますが、本格的な知財・無形資産の投資・活用戦略の開示等に至っていないにもかかわらず「実施(comply)」という判断を行えば、投資家からは、不誠実な姿勢とみなされ、今般の知財・無形資産の投資・活用促進に向けた取組の趣旨に照らして好ましいものではないと釘を刺しています。

(3)知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に向けた対応例

レポートに記載されたプロセスを列挙するにとどめます。
① 自社の現状のビジネスモデルと強みとなる知財・無形資産の把握・分析
② 知財・無形資産を活用したサステナブルなビジネスモデルの検討
③ 競争優位を支える知財・無形資産の維持・強化に向けた戦略の構築
④ 戦略を着実に実行するガバナンス体制の構築

これを機に、今後、上場企業各社のIR情報や知財報告書がどのように変化・充実していくか注視していていきたいと思います。

 

 

 

 

 

内閣府における知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会

更新日 : 2021.09.22

内閣府知的財産戦略推進事務局は、「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」を立ち上げ、令和3年8月6日(第1回)、8月30日(第2回)、9月8日(第3回)、9月22日(第4回)に検討会を行ってきました。委員にはブリヂストンやコニカミノルタ、旭化成等の知財部門の役職の方々や大学教授らが名を連ねています。

前回のコラムでも示したように、2021年6月にコーポレートガバナンス・コード(CGC)が改訂され、知財投資についての具体的な情報開示・提供、知財投資についての取締役会による実効的な監督といった原則が盛り込まれました。これは、知財投資活用戦略の開示やガバナンスの構築に企業がどのように取り組むべきかを示すためのガイドライン策定を目的の一つとしています。上場企業が2021年12月末までに、東京証券取引所へコーポレート・ガバナンスに関する報告書を提出することを見据え、2021年内にガイドラインをとりまとめる予定だとのことです。

今後もこの検討会の流れの中からCGCの知財投資・活用戦略に関連する事項について紹介していきたいと考えています。