コラム COLUMN

特許権の価値評価と評価モデル~PatVM

更新日 : 2016.06.01

東京理科大学助教授(当時) 鈴木公明氏の「特許権の価値評価と評価モデル」(パテント 2006 Vol. 59 No. 6)の記事で勉強会をしました。ドライバーという独特の概念を導入しています。

広瀬義州 早稲田大学教授(当時)を座長とする知財評価研究会は新たな特許権価値評価モデル(PatVM)を開発し、価値評価に必要な調整要因を、キャッシュジェネレーションドライバースコア(CGDS)、ロイヤリティドライバースコア(RDS)及びプロテクションドライバースコア(PDS)に分け、経済・会計・技術・法律等の視点から分析を行う客観的なスコアリングメソッドを定式化しています。

下記の計算式はそのおおまかな数式表現です。

損益計算書から求まる税引後営業利益に営業費用総額に対する研究開発支出額の比を掛けたもの(キャッシュジェネレーションドライバー)に、各特許権の実質的なロイヤルティ額(ここでいうロイヤルティはRoyaltyですので実施料のことです)(ロイヤリティドライバー)を足して、その和を権利の実質的な残存期間(プロテクションドライバー)にわたって持続するとして現在価値に割り引いたものを、特許権価値評価額(PatV)としています。

特許権独自の評価は、キャッシュジェネレーションドライバースコア、ロイヤリティドライバースコア、プロテクションドライバースコアという係数によって、営業利益や、ロイヤルティや、残存期間というドライバー値を調整することで反映させているようです。

ただ、この式では、特許発明の技術的な評価が十分に反映されていない点が気になります。

(出所:広瀬義州編著『特許権価値評価モデル(PatVM)』東洋経済新報社(2006)p.56-57を説明のため改変)

式中、j =1~J:当該特許群を構成する個々の特許権、i = 1~I:当該特許群に係るライセンス契約数、R ij:第 i 契約における第 j 構成特許権のロイヤリティの年額、RDS ijは各 R ijのロイヤリティドライバースコア(RDS)、PatV :特許権価値評価額、MV :自社実施による独占的事業価値、CGD :キャッシュジェネレーションドライバー、RD :ロイヤリティドライバー、PD :プロテクションドライバー、RV :他社実施による特許権収入価値、OP :前期税引後営業利益、OPAC :営業利益調整係数、CGDS :キャッシュジェネレーションドライバースコア、R&D :実際研究開発支出、OE :営業費用、n :特許製品の技術要素の総数、PDS :プロテクションドライバースコア、R ij   :対象特許群 A の第 i 契約における第 j 構成特許権のロイヤリティ、RDS ij :R ij のロイヤリティドライバースコア、r :リスクフリーレート