コラム COLUMN

日本弁理士会研修「知的財産価値評価の実務~特許・商標編~(東京)」

更新日 : 2016.06.17

日本弁理士会研修の「知的財産価値評価の実務~特許・商標編~(東京)」に参加しました。第1章:知的財産価値評価における基礎知識、第2章:譲渡を目的とする特許権の価値評価、第3章:譲渡を目的とする商標権の価値評価の3部構成で、特許や商標の知的財産価値評価に実際に携わってこられた先生方3名による講演でした。

最初の講師の方の言葉を借りれば、「これからの弁理士は、読み、書き、算盤ができなければならない」ということで、弁理士の業務拡大分野として知的財産価値評価業務を挙げておられます。知的財産価値に、定性的評価に加えてインカムアプローチなどの定量的評価を導入するので算盤(そろばんのことです)が大事ということです。インカムアプローチ(DCF法、ロイヤルティ免除法)、マーケットアプローチ、コストアプローチという代表的な定量的評価手法について説明をしていただきました。また、事業価値から知的財産権の寄与分を求める方法(超過利潤法、利益三分法、25%ルール)についても説明いただき、知的財産価値評価に必要な基本的事項を学ぶことができました。

第2章の譲渡を目的とする特許権の価値評価は、実際のニーズとしては、新商品を事業化するにあたり他社の特許に抵触する場合の譲渡価格の把握、事業譲渡に伴う特許権の譲渡、債務との相殺(差押えによる競売)があります。ニーズが限定的ではありますが、特許権の経済的価値評価が適正に行われていけば、特許権の流通促進と有効活用が生まれ、日本ではなかなか展開しない知財マーケットなるものに通じていくものと考えられます。譲渡価値評価プロセスの1ステップとして、特許権を含む事業の価値評価に対する対象特許権の寄与度を検討することを挙げています。定量評価の決定に際しては、定性評価結果を係数化して最終評価結果を調整することが必要になりますが、寄与度についても定性評価を加味することが重要になってきます。

第3章では、有名なブランド商標の売買事例を例示していました。商標の経済的価値評価も特許と同様に、インカムアプローチ(DCF法、ロイヤルティ免除法)などの一般的な手法を用いますが、商標権は更新可能であり半永久的に維持できるため、商品のライフサイクルを考えたうえで、評価手法を決定しなければなりません。

定性評価においてスコア化アプローチを行なうに当たり有用な評価指標、ロイヤルティ料率のデータ元等々、実務的に役立つ情報の多い研修でした。