コラム COLUMN

日本知的財産仲裁センター主催シンポジウム

更新日 : 2017.02.24

昨日は、日本知的財産仲裁センター主催の第19回シンポジウム『事業の弱みを消し、強みを増す、知財戦略の要諦~事業競争力を高める「事業適合性判定」と「事業に対する特許の貢献度評価」の効果的活用~』を聞きに行きました。

日本知的財産仲裁センターは知的財産に関する紛争を裁判外で解決することを目的として、日本弁護士連合会と日本弁理士会が共同で運営する機関です。

日本知的財産仲裁センター専門委員の方の講演である「『事業適合性判定』と『事業に対する特許の貢献度評価』の概要」が、知財価値評価を考える上で重なるテーマがあり、参考になりました。

『事業適合性判定』とはFTO(Freedom to Operate)とも呼ばれ、自社製品や方法が他社の特許に抵触しておらず、事業遂行上の支障があるかどいうかを判定することを言います。事業デューデリには欠かせないステップです。自社事業に関わる特許紛争リスクを未然に回避できるかどうかを先行技術調査の結果に基づいて見解を示すものです。

知財価値評価の観点からすれば、いわゆる定性評価に相当します。

『事業に対する特許の貢献度評価』は、ある事業に複数の特許が関わる場合に、対象特許が事業競争力の向上にどの程度寄与するかという視点から、複数の特許間の相対的価値を事業に対する貢献度として評価しようとするものです。それぞれの特許を、対象事業を構成する1以上の技術要素に振り分けて、各特許の相対的な割合を算出して、それを以て『事業に対する特許の貢献度評価』と考えているようです。その評価のために技術的観点からの係数、すなわち

競争力寄与係数K1(対象事業に対する各技術要素の寄与の割合)

特許寄与係数K2(各技術要素における特許の寄与の割合)

技術重要係数K3(各特許が特定する技術に応じた重要度での重みづけ)

と、法的観点からの係数、すなわち

登録係数K4(各特許の登録未・登録による重みづけ)

法的評価係数K5(各特許の排他力、権利化戦略性、期間、地域等を考察)

の合計5つの係数を掛けあわせて各特許の価値を算出するものです。

各特許の価値=K1xK2xK3xK4xK5

知財価値評価の観点からすれば、これも定性評価に相当しますが、次のステップである定量評価(経済的価値評価)につながる評価情報ということになるでしょう。

平成27年3月に日本知的財産仲裁センターから「『事業に対する特許の貢献度評価』の実用化研究について」という実例を交えた報告が公表されていますので興味ある方は参考にしてください。