コラム COLUMN

知財金融シンポジウム「知財とは何か“特許庁×金融庁”~知財を切り口とした中小企業の事業性評価~」

更新日 : 2017.03.03

特許庁、金融庁主催の知財金融シンポジウム「知財とは何か“特許庁×金融庁”~知財を切り口とした中小企業の事業性評価~」に参加してきました。

昨年と異なり今年は、経産省本館地下2階の講堂が会場で、定員400名、ほぼ満員でした。このシンポジウムは、知財価値評価事業に携わる私たちのほか、金融機関の融資担当者様が、特許庁公募の「知財ビジネス評価書」の効用を理解するためのものでもあります。大人気のシンポジウムであり、特に講演者の発言に貴重なものがありました。

開会挨拶で登壇した特許庁長官は2001~2004年の知財政策室長時代に知財金融に携わっていたとのことで、当時は知財に基づく動産担保融資もあったようですが、現在は特許等を融資の担保として直接取ることは少ないとのことです。しかし、特許を有している企業はそうでない企業と比べると利益率が高く、「知財ビジネス評価書」はそうした企業の事業性評価の一指標として用いることができると話されていました。

いくつかの基調講演の後、都内の銀行様と地方の信用金庫様の事例報告があり、その後講演者も交えたパネルディスカッションが行われました。シンポジウム自体は必ずしも知財ビジネス評価書そのものに関するものではありませんが、パネルディスカッションでは、金融機関における知財金融の取り組み、知財を切り口としたコミュニケーションと事業性評価、知財金融の取り組みの定着に向けて、などのトピックについて様々な意見が交わされ、その中で知財ビジネス評価書に関する話題も出ました。

財務実情や担保の有無など、従来からの画一化された評価手法に弊害が出始め、それら以外の評価手法を模索していたところ、登場した一つの試みが「事業性評価」だったということです。今までとは違った切り口からの評価手法というわけです。地方銀行のパネリストの方のお話では、かつて特許権で担保融資を実行したもののデフォルトしてしまったケースが数件あったとのことです。今では特許権を担保に融資するという考え方ではなく、知財を中心に事業性を評価して融資の是非を決めることが大事だということでした。また、「知財ビジネス評価書」は知財を切り口にした新たなコミュニケーションツールになるという話もされていました。今までは営業担当の銀行員はあまり中小企業様の事業そのものに興味を持たなかった傾向があったそうなのですが、そうした弊害を「知財ビジネス評価書」は打破したとのことです。また逆に、企業の社長様が自ら工場内に銀行員様を引き入れて下さり本当の悩みを知ってくれる者として扱っていただけた、という話も聞きました。今までは銀行様員と中小企業の社長様との会話が長く続かず、とかく金融商品の話に移ってしまいがちだった状況を、変えてくれたとのことです。

金融機関は知財ビジネス評価書という一過性のレポートだけでなく、知財を切り口とした伴走型支援を望むところが多いという印象を受けました。このシンポジウムから、銀行における知財金融への意識の高揚と定着に真摯に取り組む姿を見ることができました。