コラム COLUMN
インドの最高裁判決~ローンを銀行への商標権譲渡で相殺できるか?
更新日 : 2018.07.27
インドでの最高裁判決です(Canara Bank v. N G Subbaraya Setty & Anr 20 April, 2018)。銀行(Canara Bank)から信用貸付を利用していた個人(Settyさん)が、返済(870万円弱)が不能になったので、自身の持つ線香の商標“EENADU”を銀行に譲渡したとのことです。10年間にわたって銀行側が毎月76000ルピー(約123000円)から83600ルピー(約136000円)をSettyさんに支払い、毎月40000ルピー(約65000円)の金額をローンから相殺する、銀行は第三者に当該商標の使用を許可しロイヤルティを得ることができる、という契約だったそうです。しかし、その後、銀行側が銀行規制法 による禁止条項を理由に当該契約を取消したため、Settyさんはこの取消しを不当とし、銀行を相手取り訴訟を提起しました。銀行側は当該譲渡は誤認、不当威圧、欺罔により無効であると主張しましたが、Settyさんの勝利となり、その後Settyさんは、譲渡により生じた一定額の返還を求めて別訴訟を提起し、第一審、第二審とも原告勝訴に終わり、銀行側はインド最高裁に上告しました。結局、最高裁は銀行の主張を受け入れ、当該商標の譲渡の有効性を否定し、インドでは担保の換価に関連する場合を除き、直接的にも間接的にも物品の販売もロイヤルティ獲得もできず、商標権の譲渡がそもそも銀行規制法に違反すると判示しました。インドでは銀行ローンを銀行への商標譲渡で相殺することはできないということです。誤認等による商標権の譲渡だったとはいえ、銀行側がどのようにして当該商標権の経済的価値を評価したのだろうか、ここにも知財価値評価の一局面があったのだろうか・・・と気になったので紹介することにしました。
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