コラム COLUMN

特許紛争における損害賠償の実施料相当額

更新日 : 2019.02.26

昨日は日本知的財産仲裁センター主催のシンポジウム「特許紛争における損害賠償の実施料相当額の算定手法」に参加してきました。

日本知的財産仲裁センター弁護士・弁理士の山崎順一氏、北海道大学教授の田村善之氏、知財高裁所長の高部眞規子氏の基調講演があり、そのあと日本知的財産協会常務理事の大水眞己氏を交えてパネルディスカッションがありました。

業界で世間相場として意識されている実施料率は、訴訟にしないことを前提とした同業者間の折り合いで決められることが多いので、訴訟での特許法102条3項の「相当実施料」の算定指標とは考え方が異なるとの見解が示されました。むしろ侵害者が侵害の行為により得た「限界利益」(売上から変動費を控除したもの)の額を算定し、次に特許発明の特徴的部分を抽出して、それがもたらす顧客吸引力の評価結果から寄与率を求め、それを乗じることを推奨していました。

ライセンス契約の場面と侵害訴訟の場面とでは相当な実施料の考え方が異なります。

契約の場面では、事前的(ex-ante)に見て相当な実施料額、つまり将来の実施に対する約定であり、対象となる実施行為による利益が確定しておらず、無効や非侵害のリスクを勘案した実施料の算定になります。これに対して、侵害訴訟の場面では、事後的(ex-post)に見て相当な実施料、つまり過去の行為に対して遡及的に算定するものであって、侵害が確定しているため、無効や非侵害のリスクを勘案する必要がないということです。