コラム COLUMN

内閣府、今後の知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に向けた取組について掲載

更新日 : 2021.10.01

内閣府の知的財産戦略本部は令和3年9月24日、「今後の知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に向けた取組について~改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえたコーポレート・ガバナンス報告書の提出に向けて~」を首相官邸HPに掲載しました。

(1)競争優位の確立に向けた知財・無形資産の投資・活用戦略の意義

日本企業は、知財・無形資産の投資・活用を促すことにより、他社製品との差別化を図り、高い利益率につなげ、稼ぐ力を強化することが求められています。企業の取締役会も、経営における知財・無形資産の重要性を踏まえ、価値創造やキャッシュフローの創出の仕組みを把握分析して持続可能なビジネスモデルを検討することが不可欠です。欧米の優良企業は、知財・無形資産の投資・活用を通じて競争優位を確立し、製品価値を引き上げることで、高い利益率に結びつけている一方、日本では製品の販売価格は製造コストの1.3倍にとどまりG7諸国の中で最も低いことが指摘されています。こうした状況を踏まえ、今後、日本企業は、知財・無形資産を活用したビジネスモデルを積極的に展開し、製品・サービス価格の安易な値下げを回避し、高い利益率を追求して、企業価値の向上を達成していくことが重要な課題であると考えられています。さらに日本企業は、今後、知財・無形資産の投資・活用戦略を、資本市場で活動する投資家に対し説得力のあるロジックやストーリーとして開示・説明することが重要であると考えられています。

(2)改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた対応

2021 年 6 月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、上場企業は知財投資等についての開示(補充原則3-1③)や取締役会による実効的な監督(補充原則4-2②)を行うことが求められます。今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂は、企業に知財・無形資産の投資・活用に向けた取組を促していく上でまたとない好機とされています。上場企業に対しては、2021 年末までに、改訂されたコーポレートガバナンス・コードに沿ったコーポレート・ガバナンス報告書を株式会社東京証券取引所へ提出することが求められているので、早ければ来年の決算を踏まえた統合報告や IR 資料等に、知財・無形資産の投資・活用戦略の構築が盛り込むことが見込まれています。各企業がこうした対応について、「実施(comply)」とするか、「実施していない理由を説明(explain)」とするかは、各企業の判断に任されますが、本格的な知財・無形資産の投資・活用戦略の開示等に至っていないにもかかわらず「実施(comply)」という判断を行えば、投資家からは、不誠実な姿勢とみなされ、今般の知財・無形資産の投資・活用促進に向けた取組の趣旨に照らして好ましいものではないと釘を刺しています。

(3)知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に向けた対応例

レポートに記載されたプロセスを列挙するにとどめます。
① 自社の現状のビジネスモデルと強みとなる知財・無形資産の把握・分析
② 知財・無形資産を活用したサステナブルなビジネスモデルの検討
③ 競争優位を支える知財・無形資産の維持・強化に向けた戦略の構築
④ 戦略を着実に実行するガバナンス体制の構築

これを機に、今後、上場企業各社のIR情報や知財報告書がどのように変化・充実していくか注視していていきたいと思います。