コラム COLUMN

知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.2.0の公表

更新日 : 2023.04.24

 内閣府が「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン」Ver1.0を公表したことは、すでにご紹介しましたが、このたび、同ガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)のVer.2.0を公表しました。
 2022年1月に公表された同ガイドラインのVer.1.0では、企業がどのような形で知財・無形資産の投資・活用戦略の開示やガバナンスの構築に取り組めば、投資家や金融機関から適切に評価されるかを示すものでした。
 その後の企業・投資家・金融機関における意見や課題、国際的な環境変化等を踏まえ、本ガイドラインVer.2.0は、Ver.1.0で提示した5つの原則、7つのアクションに加え、企業と投資家との間の対話や情報開示の質を高めるためのコミュニケーション・フレームワークの概念を新たに付け加えたものとなっています。以下にそのフレームワークの概略を紹介します。

1.「事業ポートフォリオ変革からバックキャストした「ストーリー」上に戦略を位置付ける」
 • 企業の事業ポートフォリオにおける各事業の成長性・資本収益性から見た現在の位置付け(As Is)を明確にし、目指すべき将来の姿(To Be)に到達するために、どのようなシナリオで事業の位置付けを引き上げていくのか。その際に、知財・無形資産戦略をどのように活用し、実現するのかを明らかにする情報開示や対話を行う。

 バックキャスト、すなわち目指すべき未来から逆算して、知財・無形資産をどのように活用するかストーリーを立てて、投資家等に情報開示や対話を行うということです。

2.「自社の本質的な強みと知財・無形資産をビジネスモデルに接続する「企図する因果パス」を明らかにする」
 • 「製品・サービスの競争力・差別化要因となる知財・無形資産が他社と何故どのように異なり、どのような時間軸で持続可能で競争優位なビジネスモデルに繋がるのか」、その実現性を含めて説明し、その投資戦略の優位性・必然性を明らかにする情報開示や対話を行う。

 上記ストーリーを実現すべく、自社の知財・無形資産を今後のビジネスモデルの強みにどのようにつなげるのか、目標から成果までの因果関係・相関関係を明らかにして、投資家等に情報開示や対話を行うということです。 

3.「目指すべき経営指標(ROIC 等)と知財・無形資産投資・活用戦略を紐付ける」
 • 企業における知財・無形資産の投資・活用を、コーポレートレベルの経営指標(ROIC等)と紐付けて決定し、企業価値向上に対する知財・無形資産の投資・活用の貢献を明らかにする情報開示や対話を行う。

 知財・無形資産を活用したり、それに投資することが、例えばROIC(投下資本利益率)などの経営指標とどのように紐付けられるのかを可視化等明らかにして、投資家等に情報開示や対話を行うということです。

 上記の1.は2.と3.を包含した上位の概念として捉えることができます。2.の「企図する因果パス」を明らかにし、3.の経営指標との紐付けどのように紐づけられるのか明らかにして、1.のストーリー・シナリオを組み立てることが企業と投資家・金融機関間のコミュニケーションに重要だということのようです。