コラム COLUMN
青色LED事件の特許権の価値評価鑑定書②~定量的評価としての実施料率ベースの経済的価値評価
更新日 : 2016.08.18
先日は、青色LED事件特許権価値評価の鑑定書で用いられている定性的評価のためのスコアリングを取り上げました(ベンチャーラボ&ASG鑑定書)。今日は、同鑑定書における経済的価値評価のうち実施料率をベースとした価額評価を取り上げます。
実施料をベースにしますので、各年度の売上高に実施料率(20%)を掛けることにより実施料相当額を計算します。当該市場における類似業界・類似技術の実施料率を適応するのでマーケットアプローチに準拠するものです。
実施料率の検討には、(社)発明協会研究所編集の「実施料率」という書籍からデータを採ってきています。鑑定書の作成時期(H15年)から考えると、平成5年発行の第4版を用いたものと思われます。この「実施料率」という書籍は現在、平成15年9月30日発行の第5版が出ており、これについては過去のコラムで紹介しています。
本特許(特許第2688404号)は電子・通信用部品分野で最終製品がLED照明(青色LED)です。「実施料率」(第4版)によれば、電子・通信用部品分野の昭和63年~平成3年の平均実施料率4.9%で、鑑定書はこの実施料率は経年とともに増加する傾向にあると判断しています。一方、薄膜関連技術分野では実施料率30%の実績があるものの、薄膜関連技術が対象とする最終製品が不明であり、将来の不確実性等を考慮して、昭和63年~平成3年の平均実施料率の約4倍の20%を当該特許技術の実施料率と認定しています。「約4倍の20%」と認定した具体的な根拠の説明は見当たりませんでしたが、技術的にも高度で実施価値が非常に高く、定性的評価によるスコアが高得点だったことも判断に貢献していると思われます。
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