コラム COLUMN

特許庁、中小企業の事業承継について知的財産を切り口とした支援を公募中

更新日 : 2019.10.21

特許庁が、中小企業の事業承継について知的財産を切り口とした支援を公募しています。

この事業は、経営資源として知的財産に焦点をあてて、中小企業の事業承継における知的財産の取扱いを現状分析し、知的財産の承継にどのように取り組むべきかを明らかにすることを目的としており、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が特許庁から委託を受けています。実施にあたって、事業承継を知的財産ないし知的資産を切り口として支援を受ける中小企業を募集し、専門家が『自社が保有する知的財産(知的財産権、ノウハウ、ブランド等の強み)を「見える化」「磨き上げ」すること』について支援を行うとのことです。

経営・知財一体で成長を ・・・ 日経新聞「経営の視点」より

更新日 : 2019.10.14

本日の日経新聞の渋谷高弘編集委員による「経営の視点」に、「日本の特許戦略、40年進まず 知財・経営一体で成長を」と題して知財経営・IPランドスケープに関する記事が掲載されていました。メーカーの知財戦略が70年代の「ひたすら特許を出願し保有数を増やす」から40年間、進化しなかったというのです。アジアの新興国が、日本企業が出願していた大量の特許情報から製造ノウハウを取得し、自社工場で模倣し続けたために、多くの特許を有していた日本の大手電機企業は総崩れとなりました。その一方で、欧米半導体企業は自社製品の性能向上に欠かせない技術を、あえてアジアの企業に無償開放し、その上で半導体を供給したというのです。単純な特許取得戦略とは異なり、アジア企業を「利用」して、自社のコアとなる技術ノウハウはクローズしたまま自らが栄える事業モデルを、技術と契約で築きあげていた。まさにオープン・クローズ戦略を駆使した知財戦略といえます。いかに経営と知財が一体となることが重要かを、この記事は唱えています。現状を変えようとブリヂストン、旭化成、ナブテスコの知財部門が「IPランドスケープ」を経営陣に提供し始めているとのことです。知財経営とIPランドスケープの話は、渋谷氏の編著になる「IPランドスケープ経営戦略」(日本経済新聞出版社、2019年3月)にも記載されています。

書籍の紹介「IPランドスケープ経営戦略」

更新日 : 2019.09.17

今日紹介する本は、「IPランドスケープ経営戦略」渋谷高弘・IPL経営戦略研究会 編著 日本経済新聞出版社(2019年)です。日本経済新聞編集委員であり、知的財産分野の取材、執筆、講演等の活動実績のある渋谷氏が第1部の「知財経営を目覚めさせるIPランドスケープ」の執筆を担当されています。

かつて知財立国を宣言した日本において大量の特許を取得すべく「特許出願のノルマ」を課していた企業は、本来門外不出として秘匿しておくべきだった営業秘密やノウハウまでも特許出願し、公開してしまいました。公開特許公報は模倣者にとっての「最高の教科書」だったというのです。その結果、韓国、台湾、中国などの後続企業が特許庁データベースにアクセスし、さらには日本人技術者を雇って、日本の「匠の技」を吸い取ってしまい、それが原因の一つとなって日本の電機産業は衰退してしまったというのです。一方、欧米企業、例えばインテルは、自社のMPUに適合したPCIバスを搭載したマザーボードの仕様を公開し、製造権を与えて、世界中に大量に普及(オープン戦略)させながらも、コアとなる知的財産権や技術改版権は自社が独占しておき、使用者が他社のDRAMを使用すべくマザーボードの仕様を改版しようとしてもそれを禁止する契約(クローズ戦略)により、インテルの製品を使い続けるようにさせたのです。知財と契約で取引先を縛るというオープン&クロース戦略を採ってきたのです。このオープン&クロース戦略の分析は、小川紘一著「オープン&クローズ戦略」翔泳社(2015年)でなされており、渋谷氏はその内容と要旨をわかりやすく、くだいて説明しています。

日本では経営と知財との距離が非常に遠く、「発明・特許あって、知財経営なし」と警告し、その打開策として知財活用に欠かせないIPランドスケープを紹介しています。最近話題の経営デザインシートや知財ビジネス評価書等の知財を活かした資金調達のトピックにも触れています。

本書の第2部では共著者による「ケースで見るIPランドスケープ分析」として、アップル、グーグル、三井化学等のケーススタディを掲載しています。

IPランドスケープ、知的財産経営がホットな話題となっている今、読んでおきたい一冊です。

「IPランドスケープ経営戦略」渋谷高弘・IPL経営戦略研究会 編著 日本経済新聞出版社(2019年)

事業引継ぎ支援センターによる第三者承継(M&A)に係るマッチング支援データベース

更新日 : 2019.08.19

中小企業庁・中小企業基盤整備機構は、民間金融機関、仲介事業者等(登録機関)が有する引継ぎ希望案件を、全国の事業引継ぎ支援センターの相談情報をデータベース化したノンネームデータベース(NNDB)に掲載するとともに、日本政策金融公庫等公的機関の参画も可能とする改修を実施し、マッチング支援データベース機能の充実を図るとのことです。中小企業庁では、後継者不在事業者の事業承継を支援するため、平成23年度より中小企業のM&Aの相談や助言を行う事業引継ぎ支援事業を開始し、平成28年度までに事業引継ぎ支援センターを全国47都道府県に設置しています。今回、民間金融機関・仲介事業者等や、日本政策金融公庫等公的機関もDBに相談情報を登録できることになったそうです。
https://www.meti.go.jp/press/2019/08/20190816001/20190816001.html?from=mj

 

ベトナムで知的財産評価プログラムがキックオフ

更新日 : 2019.08.14

ベトナムのオンラインニュース SAIGON ONLINEの2019年7月16日付の記事によれば、ベトナムの知的財産局とホーチミン市(HCMC)の科学技術局が共催したプログラム「科学研究結果からの知的財産の評価」が始まったとのことです。専門の関係者の語るところでは、このプログラムは、知的財産管理ユニットが現在の評価プロセスを評価し、可能性のある障害または限界を特定して、実行可能な解決策を引き出すことを支援していくのだそうです。起業家にとって知的財産権の取得ですら面倒で複雑な手続きであるところ、知的財産の価値評価はさらに難易度の高い課題なのですが、その難しさを軽減するためのプログラムになるということです。

ベトナム知的財産研究所副所長のNguyen Huu Can氏は、知的財産は消費者を特定の製品やサービスに引きつけるための決定要因であるため、科学技術の研究成果から知的財産をうまく評価することは、国家管理単位の責務であると述べています。現在、ベトナムではさまざまな科学技術プロジェクトが実施されていますが、研究成果の知的財産権の問題には適切に焦点が当てられていないと考えられています。したがって、コスト・アプローチ、マーケットアプローチ、およびインカムアプローチの3つの基本的な方法に従って国内の知的財産の価値を評価することにより、科学技術研究成果の活用の権利を譲渡したり知的財産を介して自己資本を拠出したりする際の利益を的確に把握することができると考えられます。

先日、ASEAN事務局のLOOI TECK KHONG 氏による「ASEAN知財アクションプラン2016-2025:実施状況と今後の計画」というシンポジウムに参加しましたが、そこでも最後に「知的財産評価は非常に難しい分野横断的な課題であり、知的財産の正確な査定と流動化を可能にするためには政府間機関の取組みを行う必要がある」と述べておられました。ベトナムのみならず、ASEAN諸国でも同様に知的財産の価値評価の重要性が強く意識されていることがわかります。